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子供の頃から寝付きが悪い。布団にもぐってから1時間、時には2時間以上眠れないこともざらだった。小さい頃ならそんな時は気分を変えるため枕持参で親の寝室に押しかけたりしていたが、ある程度成長してからはそういうわけにもいかず、社会人になってからは「早く眠らなくては明日が辛い」とあせる悪循環。
暖かい牛乳やワインを飲んでみたり、軽いストレッチをしてみたり、アロマポットで寝室をラベンダーの香りで満たしてみたり、クラシックを聴いてみたり、寝つきを良くするために役立つと言われることは一通り試してみたが、いずれも効果は今ひとつ。
というのも、どういうわけか目を閉じると決まって何かしら嫌な思い出が蘇ってくるのだ。それは昔の職場のお客から受けた理不尽な叱責だったり、今はもう顔を会わせることのない高校のクラスメートから「足が太いね」と言われたことだったりで、今となってはどうでもいい出来事ばかりなのだが、当時相手に言い返すことができず心の内で今も不満を燻らせているらしい記憶が次から次に蘇る。時には自分でもすっかり忘れていたような事を突然フッと思い出したりしてこれはこれで面白いのだが、我ながらよくこれだけ嫌な思い出ばかり忘れずに覚えていられるものだと感心する。英単語はいつまで経っても覚えられないのに。
そんな私とは対照的に、うちのダーさんは毎晩目を閉じてから数秒後にはスヤスヤ寝息を立て始める。その早さ、のび太のごとく。
ある日ダーさんに布団で目を閉じてから頭の中で何を考えているのか尋ねたところ、少し首を傾げて
「・・・楽しいことかな?」
と言う。なるほど。その発想は今までなかった。
教えを授かったその夜、早速眠りにつく際何か楽しいことを考えようと試みた。が、・・・はて、楽しいことって何だろう?えーっと、えーっと、いや、待って、何かあるはずだって。楽しいこと、楽しいこと・・・。あれ?もしかして、私って自分が楽しいと思うことが何か分からない!?・・・眠れない。
翌日、改めてダーさんに「ねえ、楽しいことって具体的にどんな事?」と尋ねたところ、
「えー?例えば、外を歩いてたら道路にお金が落ちてるのを見つけてラッキーとか、空から新聞が落ちてきて拾って読んでみたら面白い話があったりとか、駅に着いたら電車がちょうど来たとか・・・」
へー。そういう発想も今まで私にはなかった。
以来ベッドに入って目を閉じる度、スーパーに行くと欲しかった商品がちょうど安くなっていたり、知らない場所を歩いていて思いがけずおしゃれなカフェを見つけたり、何かラッキーな出来事が起こるイメージを描くよう努めてみたのだが、まもなくネタが尽きた。うーん。
仕方がないので、とにかく自分にプラスの感情が湧いてきそうな状況を思い浮かべてみた。始めはこれもなかなか思いつかなかったのだが、やがて、天気の良い日に芝生の丘に寝転がる、見晴らしの良い温泉に浸かる、海や満点の星空をボーッと眺める等、体がリラックスしているイメージを描くと効果があることを発見。
何だか青い鳥を探していたような気分ではあるが、嫌な思い出で頭の中を占められることはなくなった。これでいいのだ。

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オーストラリアで暮らすようになってから、しばしば肌に異常が現れるようになった。首や腕の広範囲に渡って蕁麻疹のような赤い発疹が浮き出て痒くてたまらなくなったり、口の周りや顎下に大きなニキビが同時にいくつも出来たりといったものだったが、それらの症状はいずれも薬も飲まずに数週間のうちに消えて事なきを得た。
ある日のこと、今度は口元が痒くてたまらなくなった。掻いているうちにやがてその部分は白い粉をふき始め、若干腫れてきた。白い粉は洗顔等で水に濡れるとポロポロと剥がれ落ちる。掻いたり剥がれ落ちたりを繰り返しているうちに表面は堅くざらつき、直径2cmほどの赤黒ずんだ跡が目立つように。これはもしかしてアトピー性皮膚炎というやつでは?
そんな状態に陥っても医者嫌い、薬嫌いも手伝って放置していたのだが、気がつけば治ることなく4ヶ月が経過した。これほど一つの症状にしつこく悩まされるのは初めてのことで、「さすがに何か処置を施さなければまずいのではないか」と思い始めた矢先、全豪オープンテニスが開幕を迎えた。
それまで数ヶ月間スーパーに出かける時くらいしか外出しない生活を続けていたのだが、テニスファンの私は1月後半ほとんどの時間を炎天下での観戦に費やした。そんな毎日を繰り返していたある日、ふと口元の痒みも跡もいつの間にかきれいさっぱりなくなっているのに気がついた。ご存知の方も多いようにオーストラリアの紫外線は強烈で、シミを気にしてそれまで極力肌をさらさないように心がけていただけに、この結果には心底驚いた。そして、現在も再発はしていない。
調べてみたところ、一般には「太陽光線はアトピーを悪化させる」という説があるらしい。私の症状がいわゆるアトピーだったのかどうかは分からないし、紫外線が治療に効果があったという確たる証拠もない。それでも、2週間ほぼ毎日最高気温が30℃を超える屋外で過ごしているうちに、4ヶ月治らなかった痒みが嘘のように消え去ったこと、また、家の中で靴下なし、キャミソール1枚でいても大丈夫なほど冷え性が緩和されたのは事実だ。
自分の力でアトピーが消えた!
堀田 忠弘

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